高圧蒸気滅菌は、オートクレーブ滅菌または湿熱滅菌とも呼ばれる、高温高圧の飽和水蒸気によって微生物を殺滅する滅菌プロセスです。食品、医薬品、また生化学分野の研究開発および医療などにおいて、使用される器具や薬剤、試薬、培地、土壌等の滅菌処理を行います。高圧蒸気滅菌プロセスは、熱に安定的な被滅菌物を処理することが可能です。滅菌法は、他に乾熱滅菌や酸化エチレンガス滅菌、ガスプラズマ滅菌等がありますが、高圧蒸気滅菌は、短時間で滅菌が可能であり、また水蒸気を使用するために残留毒性がないことから、幅広い用途において最も利用されている滅菌プロセスになります。
高圧蒸気滅菌は、一般に2気圧、115〜135 ℃ 程度の系内で処理を行います。滅菌条件は、温度、湿度、圧力、時間が設定パラメーターになります。完全に滅菌処理を行うためには、滅菌条件を適正に管理する必要があります。高圧蒸気滅菌における基準は、以前は第十六改正日本薬局方において115〜118℃で30分間、121〜124℃で15分間、126〜129℃で10分間と定められていましたが、現在の第十七改正日本薬局方においては明確に定められていません。高圧蒸気滅菌における滅菌条件は、例えば低温で処理する場合には時間を長く設定するなどの調整が必要になります。温度条件は121℃を標準としています。これは、今までに2気圧下における水の沸点である250°F(121.1℃)の条件で多くの研究が行われてきたことから、現在においても標準温度として定着しています。温度と時間の条件設定においては、通常はF0値が用いられます。F0値は、湿熱滅菌工程におけるプロセスの微生物不活化能力の程度で、10℃のz値(D値を10倍変化させる温度変化の度数)を持つ微生物について、121.1 ℃に等価な時間で表される値です。D値とは、供試微生物の生菌数を1/10に減少させるのに要する時間です。F0値によって121.1℃の滅菌条件における必要時間を設定します。また、滅菌時間は、被滅菌物を含む系内のすべてが設定温度に到達してから起算することが重要です。被滅菌物が系内の設定温度に達するまでにはタイムラグがあるため、その相当分を考慮して設定時間を決める必要があります。湿度は、プロセス系内が湿度100%の飽和水蒸気で満たされ、空気は系外に排出されている必要があります。仮に被滅菌物に空気が接触していた場合は湿熱滅菌とは呼べず、必要な滅菌条件が変わってしまいます。そのため、高圧蒸気滅菌プロセスは、適切な脱気を行うことによって系内の湿度を制御しています。
ガラス容器などの器具を滅菌する場合は、設置方法に注意する必要があります。空気は水よりも重いため、容器内に空気が溜まった状態では、容器外部は湿熱環境であっても、内部は空気が抜けないために乾熱環境となり、適切に滅菌処理が行えない可能性があります。また、容器を密閉した状態で設置した場合は、容器内の圧力が上昇して破損する可能性があります。被滅菌物を適切に設置することによって、滅菌不良を防止することが重要です。
高圧蒸気滅菌装置は、労働安全衛生法に定める圧力容器に該当します。圧力容器は、最高使用圧力と缶体の内容積の積で表されるPV値に応じて、第一種圧力容器、小型圧力容器、簡易容器の三つに分類されています。第一種圧力容器は、作業主任者を選任し、年に1回の性能検査の実施が義務付けられています。小型圧力容器は、年に1回以上の定期自主検査および検査結果の3年以上の保管が義務付けられています。
当社は、器具滅菌や培地滅菌、土壌滅菌など、用途に応じた高圧蒸気滅菌プロセスを提供しています。製品は、圧力容器規制(第一種圧力容器、小型圧力容器)および衛生規則に従った設計で、プロセスは完全に自動化されています。任意に設定した滅菌条件により、全自動で滅菌を行います。熱源は電気、ガス、蒸気から選定可能で、目的に応じて幅広いオプションを揃えています。