医薬品サンプルの
粉体加工を実施します。
原薬から賦形剤まで、医薬製剤の様々な製造にスプレードライが使用されています。
球形粒子が得られるため、流動性・充填性が高く打錠安定性の向上、非晶質化による溶解性の改善、難溶解性添加物とのマイクロカプセル化による徐放性の付与、ドラッグデリバリーシステムへの活用等、幅広く使用されています。
※当社の保有設備は汎用装置であり、医薬仕様ではありません。工業製品の処理も同装置で実施するため、医薬品の製品製造はお引き受けしていません。医薬品の開発等のサンプル製造・試作テストをお引き受けしています。
医薬品のスプレードライについてこのようなお悩みはありませんか?
- 品質向上のためにスプレードライ造粒を検討したい。自社に設備が無いのでノウハウがなく、どのように始めたらよいのかわからない。
- スプレードライヤーを使用した新製品を開発したいが、自社のスプレードライヤーは、既存製品製造に使用しているため、コンタミ(異物混入)リスクの懸念から使用できない。
医薬品のスプレードライに求められるもの
医薬品にスプレードライが求められていることは、用途によって様々です。
錠剤製造のための安定した充填性、成形圧縮性
打錠機により安定した品質の錠剤を製造するためには、臼に均一に充填されるよう、顆粒に十分な流動性が求められます。スプレードライ粉は丸く真球状で、かつ適度な強度のため、転がりやすく流動性、成形圧縮性が高くなります。流動性は粒子径に依存するため、D50=数十μm以上が望ましいと言えます。
溶解性の改善
多くのAPI(原薬)は難溶解性であり、製品化には溶質改善が課題となりますが、スプレードライによる瞬間乾燥により、非晶質化が期待できます。非晶質のAPIは、安定性が低く、後工程や経時によって結晶に転位するので、一般的にはポリマー等を添加した液をスプレードライして、複合粒子を製造します。
徐放性付与により効能持続性向上
難溶解性添加剤により有効成分をマイクロカプセル化、コーティングすることにより、医薬成分に徐放性を付与し溶解速度を制御することで、効能を長時間継続させることができます。また苦み成分のマスキングにも効果があります。
医薬品に関するサービス内容
- スプレードライヤーによる
受託加工・試作テスト造粒 - フリーズグラニュレーターによる
受託加工・試作テスト造粒 - 粉体の特性評価
(粒度分布、粒子形状、流動性、かさ密度、
粒子強度、比表面積、真密度、水分値) - 自動ふるい機による粉体の分級
- レオメーター、レーザー回折粒度分布計、
粘度計によるスラリーの特性評価
医薬品のスプレードライ事例
錠剤の賦形剤等で広く使用されている乳糖をモデルとして、スプレードライ顆粒、フリーズグラニュレーション顆粒を調製し、評価しました。
顆粒調製方法
No.1 | No.2 | No.3 | No.4 | |
---|---|---|---|---|
原料 | 乳糖30w%水溶液 | 乳糖30w%水溶液 | 乳糖30w%水溶液 | 乳糖30w%水溶液 |
顆粒調製 | スプレードライ 8000rpm |
スプレードライ 12000rpm |
フリーズ グラニュレーション湿式 |
フリーズ グラニュレーション乾式 |
粒度分布
スプレードライ顆粒は粒度分布がシャープで小さく、フリーズグラニュレーション顆粒は粒度分布がブロードで特に湿式冷却方式で調製した顆粒が大きいことが示されました。スプレードライがシャープな粒度分布であるのは、ロータリーアトマイザー方式で噴霧しており、フリーズグラニュレーションは二流体ノズルで噴霧していることが主要因です。またフリーズグラニュレーションは乾燥時に収縮がおきないため、スプレードライと比較して粒子が大きくなる傾向です。フリーズグラニュレーションの乾式冷却と比較して湿式冷却の顆粒が大きい理由は、凍結固化速度の違いです。双方とも二流体ノズル方式で噴霧していますが、湿式冷却方式は吐出口近傍直下に液化窒素の液面が存在しているため、噴霧直後の大きい液滴が液化窒素に含侵して凍結固化されます。乾式冷却方式は冷却ガスの気流中に噴霧されるため、液化窒素と比較すると凍結固化速度が遅く、噴霧直後の大きい液滴が分裂して微細液滴となってから固化しています。
SEM画像
粒度分布の通り、SEMでもスプレードライ顆粒は粒度分布がシャープで小さく、フリーズグラニュレーション顆粒はブロードで大きいことが確認できます。形状はスプレードライ顆粒は球形で表面が膜のような構造をしていることに対し、フリーズグラニュレーション顆粒は歪な形状で表面の一部は膜状となっているが、大部分は多孔質な構造となっていることが確認できます。
結晶構造
X線回折装置(XRD)にて結晶構造を測定した結果、SD8000rpmが一部結晶構造を保持しており、その他の検体は、非晶質であることが確認できました。SD8000rpmはロータリーアトマイザーの回転数が低く粒度分布結果からも大きい粒子となっていたので乾燥に時間を要したことが一部結晶構造を有した原因と考えられます。フリーズグラニュレーション顆粒においては、SD8000rpmよりはるかに大きい粒子となっていましたが、完全に非晶質な状態であることが確認できます。