スプレードライ造粒により流動性を
高めた金属粉末は、粉末冶金用途に
適しています。
金属製品製法の一つである粉末冶金において、スプレードライによる造粒は流動性を高めることはもちろん、異なる素材を分散させたスラリーを瞬間乾燥させることにより、偏析の少ない複合粒子を製造することに適しています。複合粒子は粉末冶金だけではなく、溶射材にも適しており、またセラミックスと複合させることによるサーメットの製造にもスプレードライは使用されています。
金属のスプレードライについてこのようなお悩みはありませんか?
- 製品の性能向上のためスプレードライ造粒を検討したい。自社に設備が無いのでノウハウがなく、どのように始めたらよいのかわからない。
- 自社で製造しているスプレードライ顆粒が中空状で硬く、成形体・焼結体密度が上がらないので、空孔のない中実球を製造し、性能を向上させたい。
- 自社で製造しているスプレードライ顆粒の性能を上げたいが、保有スプレードライヤーが大きく、改善のための少量試作テストを実施することが困難。
- スプレードライヤーを使用した新製品を開発したいが、自社のスプレードライヤーは、既存製品製造に使用しているため、コンタミ(異物混入)リスクの懸念から使用できない。
- 定期的に数十kg~数百kg程度の粉体が必要となるが、自社のスプレードライヤーが大きく、取り回しが悪い。
- 今までは少量試作のため、エバポレーターとふるいで簡易造粒していたが、性能が安定せず、まとまった量も生産できないので、スプレードライ造粒したい。
金属用途のスプレードライヤーのシステム
金属用途のスプレードライヤーは、乾燥チャンバー下で製品回収、サイクロン下・バグフィルター下で微粉回収するシステムが基本仕様となります。金属粉は比重が高く、また製品に微粉が混入することを好まないので、サイクロン・バグフィルターで微粉を別回収します。金属は酸化する物性が多いので、有機溶剤を分散媒としてスラリー調製することが多く、その際は大気を乾燥ガスとするオープンシステムではなく、窒素・アルゴン等の不活性ガスを循環させて有機溶剤の乾燥と回収を繰り返すクローズドシステムを選定することが多くあります。当社では、系内をガス濃度計で管理し、有機溶剤の爆発下限界の1/4以下で制御する有機溶剤対応オープンシステムでの金属造粒も行っています。
金属のスプレードライに求められるもの
基本的にはセラミックスと同様に、スプレードライ造粒後、加圧成形、焼成により製品が製造されることが主ですが、溶射材のように、成形工程を介さず、粉体が最終製品となることもあります。スプレードライの役割は、①造粒により流動性を高める、②多原料から複合粒子を造粒する、の2点が主に求められています。①については、焼結や溶射の性能を考慮すると微粉が好ましくサブ~10μm程度の素材が多く選定されますが、微粉末は流動性に乏しく、成形用途では金型に均一に充填されず、粉体での使用であれば、輸送等のハンドリングが困難となります。そのためスプレードライ造粒により流動性を高める必要があります。②については、WC-Coの超硬材料のような、比重・粒子径の異なる素材を均一に混合させることは困難であるため、均一に分散したスラリーから瞬間乾燥して複合比率を保持できるスプレードライ造粒により偏析を防止します。
金属に関するサービス内容
- スプレードライヤーによる
受託加工・試作テスト造粒 - フリーズグラニュレーターによる
受託加工・試作テスト造粒 - 粉体の特性評価
(粒度分布、粒子形状、流動性、かさ密度、
粒子強度、比表面積、真密度、水分値) - 自動ふるい機による粉体の分級
- ビーズミル、ボールミルによる
スラリー調製 - レオメーター、レーザー回折粒度分布計、
粘度計によるスラリーの特性評価 - 一軸成形機・CIP成形機による
成形体作製(少量サンプル) - マッフル炉による成形体、粉体の仮焼き
(少量サンプル) - 管状炉による焼結体作製
(少量サンプル) - 密度計による焼結体密度評価、
万能試験機による
強度評価成形体作製(少量サンプル)
金属のスプレードライ事例
WC(タングステンカーバイド)+Co(コバルト)の複合粒子製造
WC-Co系の複合粒子製造は、スプレードライで古くから製造されています。開発初期は一流体加圧ノズルでの噴霧が主でしたが、近年は噴霧の制御しやすさ、粒度分布のシャープさから遠心噴霧方式が選定されることも多くあります。WCとCoを均一に分散させたアルコール系スラリーをスプレードライにて瞬間乾燥し、造粒することで、偏析の無い複合粒子が製造できます。丸く流動性が高いため金型に充填し、連続してプレス成形しても、安定した品質で大量生産が可能となります。炉で成形体を加熱、Coが溶解・強固に結着することで、超硬合金が製造されます。
溶射材の製造
巨大物質に対し表面処理を可能とする溶射技術は、耐摩耗、耐熱等様々な機能を付与することができるため、産業用途に広く使用されています。溶射材は、様々な製造法がありますが、スプレードライも使用されています。
他の製造方法と比較して、球形となるため流動性が高く扱いやすい、粉砕工程を介さないため、高純度品が製造できる、複数素材を組み合わせた複合粒子を均一に製造できる等の様々な優位性があります。