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フラックス洗浄

  • #精密洗浄システム

フラックス洗浄(Defluxing)とは、エレクトロニクス産業において行われるプリント基板や電子部品の機器基板、半導体パッケージ等のはんだ付け実装時に、残渣として生じるフラックスを除去する工程です。フラックスには、溶融したはんだの濡れ広がりを促進することに加えて、母材表面の酸化膜を除去し、溶融したはんだと母材表面の再酸化を防止する役割があります。はんだ付け工程後は、フラックスの残渣が残存した状態になります。フラックス残渣には、様々な活性剤や金属塩が含まれており、それらを放置した場合は、接続不良や接触不良、腐食等の不具合が発生する可能性があります。そのため、製品の品質あるいは製造工程上において悪影響を及ぼす可能性がある場合には、フラックス残渣を除去する必要があります。※フラックスには、基板上の銅の防錆表面処理として用いられるプリフラックスという材料もありますが、本稿では、ポストフラックスと呼ばれる、はんだ付け実装時に使用するフラックスについて説明しています。

フラックスは、はんだ付け促進剤の総称であり、主成分により以下の3つに大別されます。

樹脂系フラックス

ロジン、変性ロジン、合成樹脂を主成分としたフラックスです。樹脂系フラックスには、有機溶剤および活性剤として有機酸やアミン類とそれらのハロゲン化物、また粘度調整目的としてチクソ剤等が含まれます。ロジン系フラックスとも呼ばれ、電子部品のプリント基板など、エレクトロニクス実装工程において幅広く利用されています。

有機酸系フラックス

主剤として水ベースと溶剤ベースがあり、活性剤には有機酸やアミン類およびそれらのハロゲン化物、また粘度調整目的としてチクソ剤等が含まれます。有機酸系フラックスの中でも、水溶性ポリマーをベースとして有機系の活性剤を含めたものを水溶性フラックスといいます。

無機酸系フラックス

無機酸、無機塩等を活性剤として使用したフラックスです。水やグリセリン、ワックス等に活性剤を溶解しています。プリント基板や電子部品の実装には使用されません。

フラックスは、通常、はんだ粉末と混合したソルダペーストとして使用します。フラックスは、予熱時の温度条件や部品の熱容量等、個別に要求されるソルダリング条件に応じて選定します。ハロゲンフリーや低VOC等の環境に配慮したフラックスもあります。

フラックス除去工程で使用される洗浄剤は、水系・準水系および溶剤系に大別されます。ソルダリング条件やその後の保管条件等によって、要求される洗浄剤は異なりますが、一般的に以下の洗浄剤が使用されています。

水系・準水系洗浄剤

フラックス除去用途として設計された、中性やアルカリ性の水系洗浄剤および準水系洗浄剤があります。準水系洗浄剤は、水系洗浄剤と有機溶剤等の非水系洗浄剤がブレンドされた洗浄剤です。安全性に優れ、環境にもやさしい利点がありますが、廃液が多く発生します。

溶剤系洗浄剤

炭化水素系や臭素系、代替フロン系の洗浄剤があります。溶剤の種類によって化学的特性が異なるため、フラックスの種類や洗浄性、安全および環境面を考慮して選定します。炭化水素系洗浄剤は、樹脂の溶解性は高い反面、イオンの除去性は低くなります。毒性が低く、比較的安価で、蒸留再生によるリサイクルが可能です。炭化水素系洗浄剤は引火性があるため、防爆対応等の安全対策が必要です。臭素系および代替フロン系洗浄剤は、不燃性で高い熱的・化学的安定性を持つため、安全性に優れます。一方、人体および環境への影響があるため、適切な環境対策が求められます。

フラックス洗浄方式

フラックス洗浄における代表的な洗浄方式には、以下があります。

超音波洗浄

被洗浄物を浸漬させた液体を超音波を用いて振動させ、付着したフラックス残渣を剥離して除去します。超音波を放射させる超音波振動子が組み込まれた洗浄槽に洗浄剤を投入し、その液中に被洗浄物を浸漬させます。超音波振動子は、別に設置する超音波発振器によって電気的に発生させます。超音波洗浄の作動周波数は、被洗浄物の材質や強度、またフラックス残渣の付着度合いを考慮して選定します。

シャワー・スプレー洗浄

液体をノズルから噴射して被洗浄物に当てることによって、付着したフラックス残渣を除去します。洗浄剤を噴射して洗い流すため、汚れの再付着が起こりにくいという特徴があります。物理面における洗浄性は、ノズルの種類と噴射圧力を調節することで変更が可能です。気中から洗浄剤を噴射するため、被洗浄物に均質に作用させるためにノズルの配置や角度を最適化する必要があります。主に、搬送コンベアと一体で組み合わせたインラインシステムとして設計します。

液中浸漬・噴流洗浄

洗浄液が入った洗浄槽内に被洗浄物を浸漬し、主に洗浄液の持つ化学作用によってフラックス残渣を剥離し、除去します。浸漬洗浄の洗浄性は、洗浄剤の濃度と液体温度、浸漬時間によって決まります。また、液流を利用した噴流洗浄もあります。被洗浄物を浸漬した液中に、ポンプで液流を発生させて洗浄します。超音波洗浄やシャワー・スプレー洗浄と比べて、物理作用は比較的弱く、洗浄性に劣る反面、被洗浄物に与えるダメージは少なくなります。また、気中から噴射するシャワー洗浄等と比較した場合、泡立ちが少なくなるという利点があります。

当社は、工業用精密洗浄プロセスにおいて、高い洗浄精度と環境保全を両立させた精密洗浄プロセスを提供しています。洗浄方式は、上述の洗浄方式およびそれらの複合プロセスまで、総合的に取り扱っています。付帯装置は、水切り・脱水から真空乾燥、ベーパー乾燥、濃縮、濾過、蒸留再生、純水製造・再生等を用途に応じて組み入れることが可能です。搬送方式は、ネットコンベヤ搬送やバスケット搬送、フープ搬送等から選定可能です。プロセス制御は、手動機から自動機まで対応しています。予算に応じて、必要最低限の自動化(半自動化)を行うことも可能です。レシピやロット管理、前後プロセス間あるいは中央制御とのコミュニケーションについても設計対応することが可能です。

当社の洗浄テストセンターにおいて実際のワークを用いた洗浄テストを行い、その評価をもとに最適なプロセス設計を行います。要求される洗浄精度を満たした上で、可能な限りランニングコスト(洗浄剤消費効率や電力消費等)を低減した洗浄プロセスを提供します。

※掲載している写真は、実際のプロジェクトとは異なり、イメージとして使用している場合があります。

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