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生菌率を高く保持する – 菌体のスプレードライ(噴霧乾燥)とフリーズグラニュレーション(凍結造粒)

  • #スプレードライヤー
  • #フリーズグラニュレーター

プロバイオティクス等における生菌体の粉体化は、一般的な医薬品や食品と比べて高いプロセス技術が要求されます。粉体化プロセス時には、菌体を死滅させずに、生菌率を高く維持した上で、高効率で安定した生産を行う必要があります。生菌体の粉体化は、主にスプレードライヤーによる噴霧乾燥およびフリーズドライヤーを用いた凍結乾燥品を粉砕加工する製造法が広く利用されています。当社は、スプレードライヤーによる生菌体の噴霧乾燥工程において多数の実績があります。蓄積された経験をもとに、要求品質を満たした最適なプロセス設計を行います。スプレードライヤープロセスの諸条件を最適化し、粉体品質をコントロールする事が可能です(プロバイオティクス – 乳酸菌・ビフィズス菌の噴霧乾燥プロセス)。また、当社が新たに開発した凍結造粒(フリーズグラニュレーション)という粉体製造プロセスがあります。フリーズグラニュレーション法は、液体を低温環境下に噴霧することによって瞬間的に凍結させ、その凍結体を凍結乾燥工程で昇華させることにより、球形で流動性に優れた造粒体を製造することが可能な製造プロセスです。2019年に、当社が世界初の量産型フリーズグラニュレーターとして開発に成功しました(特許)。

フリーズグラニュレーション法で得られる造粒体は、球形で流動性に優れ、低密度で高い均質性を保持することが可能です。造粒体は10~500µm程度の粒度範囲において制御が可能で、スプレードライ法と同等以上のタップ密度が得られます。また、高温の乾燥プロセスとは異なり、原料への熱影響が無く、また酸化を最低限にとどめることが可能です。

凍結造粒法は、新しい製造プロセスであることから、アプリケーション事例はまだ多くありませんが、現在スプレードライヤーで生産している製品は、フリーズグラニュレーターを採用することによって、品質の向上が見込める可能性があります。噴霧乾燥法と比べて熱影響が無く、また低密度で均質な中実顆粒が製造できることから、今後は幅広い産業分野において、製品の品質改善や素材開発に貢献することが期待されます。

以下は、当社が過去に行った乳酸菌の生菌率を比較した実験結果です。スプレードライ法とフリーズグラニュレーション法を用いて、複数の温度条件で製造した発酵乳液粉体を評価しました。

粉体外観
スプレードライ粉体は、全体的に黄色くなり、フリーズグラニュレーション粉体は白色になりました。スプレードライ粉体は、高温条件であるほど黄色味を帯びており、熱の影響が顕著に現れる結果となりました。

乳酸菌生菌数
MRS寒天平板嫌気培養法で評価しました。−30℃条件のフリーズグラニュレーション粉体の生菌数が最も高くなりました。乳酸菌は、高温条件は好ましくないことはもちろんですが、低すぎる温度に曝されることでも、生菌数が減少することが分かりました。

SEM画像

※この実証結果は当社により特許出願中です。

スプレードライ粉体は、造粒体の表面に隙間がなく、密に詰まっています。フリーズグラニュレーション粉体は、造粒体の表面に空孔を多く有し、多孔質な顆粒構造となっています。フリーズグラニュレーション粉体は、湿潤性や溶解性において優位となることが予想されます。生菌率を維持した上で、高い効率で安定生産を行うためには、原料、運転条件、さらには最終的な粉体製品の品質を考慮した上で、適切なプロセス設計を行う必要があります。粉体製品の品質管理は、粒度分布、かさ密度、含水率が主要なパラメータとなります。これらに加えて、流動性や湿潤性、溶解性、色合い、味覚にかかわる粒子表面特性等を含める場合もあります。

液体噴霧方式は、当社の最新型フリーズグラニュレーター CS220の場合は、スプレードライヤーと同様に、ロータリーアトマイザーおよび各種ノズル方式から選定することが可能です。スプレードライヤーと比較した場合、生菌率の保持が容易になるため、必ずしも粒子径を小さく制御する必要がなくなります。そのため、流動性やかさ密度をより柔軟に制御することが可能になります。噴霧方式を選定する際は、噴霧液滴径だけではなく、物理的な接触および摩擦による影響も考慮にいれます。

フリーズグラニュレーターで製造した凍結体は、回転式フリーズドライヤーによって凍結乾燥を行います。回転式フリーズドライヤーは、乾燥チャンバーが回転することにより、凍結体が短時間で均質に乾燥します。一般的な棚型凍結乾燥装置と比較した場合、乾燥時間を50%以上短縮することが可能です。シンプルな構造で、凍結体の仕込みや乾燥品の取り出し、洗浄を容易に行えます。スケールアップによる大型機の設計も可能です。また、フリーズグラニュレーターの製品回収部に複数台配置して連結することにより、連続式に近づけた製造を行うことが可能です(準連続式プロセス)。

当社は、スプレードライヤー、スプレークーラー、フリーズグラニュレーターの粉体製造だけではなく、前後工程を含めたテスト・分析・測定サービスを提供しています。国内二拠点のパウダーテクニカルセンターおよびASEANパウダーテクニカルセンターの計三拠点において、顧客の課題を解決するために日々運営しています。2023年に新設した第二パウダーテクニカルセンター(PTC2)では、国内最大規模の分析・測定装置を取り揃えています。粉体加工だけではなく、原料調製から分析・評価までワンストップで対応する事が可能です(粉体テスト・分析・測定サービス詳細粉体委託加工サービス詳細)。

当サービスをご紹介する特設サイトプリス粉ラボを新たにリリースしました。サービスや施設の詳細、また技術資料もご案内していますので、ぜひアクセスしてください。

※掲載している写真は、実際のプロジェクトとは異なり、イメージとして使用している場合があります。

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