香料や香辛料は、動物や植物から抽出して得られる天然成分や、化学的に合成された化合物を調合して作られます。調合された香料や香辛料は、食品や飲料を中心に、化粧品、医薬品等において幅広く利用されています。
フレーバーやスパイスには、レモンやオレンジ、グレープフルーツ等のシトラス類、ミントやメントール、シナモン、バニラ、コーヒー、茶、香木等、多種多様な植物由来の素材があります。特にスパイスは、味にメリハリをつけ、また臭み消しやマスキングとしても利用されます。日本の山葵、生姜、紫蘇、柚子、山椒等の伝統的な香辛料や、胡椒、唐辛子、ガーリック、ナツメグ、カレー、ターメリック、パプリカ、カルダモン、またバジル、コリアンダー、レモングラス、ローズマリー等のハーブ類も含め、多様な素材が使われます。また、これらの素材と調味料を調合したシーズニングとしても、様々な商品があります。近年は、これらの素材を調香し、新しいフレーバーを開発するアロマケミカルも発展しています。
フレーバーとスパイスの役割は、主として以下があります。
着香:無香あるいは香りの少ない素材に香りを付与する
補香:香りが減少した、あるいは失った素材の香りを補う
矯臭:好ましくない香りをマスキングして矯正する
これらの香料・香辛料には、水溶性、油溶性、乳化状の液体と粉末があります。粉末は、液体と比べて質量と体積が減少するため、輸送コストをおさえることができます。また、乾燥品であることから、長期間保存することが可能です。
乳化機能性油や植物抽出液等は、フレーバーや芯素材に賦形剤を添加して噴霧乾燥します。乾燥製品は、フレーバーの保持以外にも、成分の均質性や安定性、可溶性、徐放性等の品質が求められます。果糖を含む単糖類や少糖類、アミノ酸等の低分子素材を添加する場合は、熱劣化を防止する必要があります。スプレードライヤーは、他の乾燥プロセスと比較した場合、乾燥に要する時間が短く、熱影響の少ないプロセスといわれています。しかし、素材の熱変性が懸念される場合は、スプレードライヤーの乾燥温度やプロセスガス量等の運転条件を適切に設定する必要があります。
香料・香辛料の噴霧乾燥は、一般に乾燥温度を低く設定して穏やかに乾燥させます。低温の運転条件の場合は、液体が緩やかに乾燥するため、かさ密度が高くなる傾向があります。高温条件では、液滴が短時間で乾燥するため、粒子の外殻形成が早まります。そのため、液滴の内部蒸発による粒子の膨張や破裂、中空化が生じることがあります。含水率については、低温条件が高く、高温条件が低くなります。液体噴霧方式は、ロータリーアトマイザー、二流体ノズル、一流体加圧ノズル、超音波ノズルから選定します。噴霧方式を選択する際は、噴霧液滴径だけではなく、物理的な接触および摩擦による影響も考慮にいれます。
吸湿性の高い成分やクエン酸等の潮解性のある成分が多く含まれる場合は、プロセス内における製品付着を適切に防止する設計が必要になります。具体的には、プロセスガスの全部または一部に除湿空気を導入します。加えて、乾燥チャンバーにエアスイーパーあるいは除湿エアラインを設置することがあります。また、粉体回収ラインの温度と湿度を適切に設定することが重要です。例えば、粉体の空気輸送時に、製品回収ラインの除湿エア量と温度、また輸送距離を最適化することにより、回収時における粉体品質を一定にする方法があります。酸化防止対策としては、添加剤の付与による原料液の調整以外にも、スプレードライヤーのプロセスガスに不活性ガスを使用することによって、プロセス面から酸化を防止することが可能です。
原料については、濃度や添加剤の有無、またその添加量が主要な指標となります。原液濃度を高くすると、単位時間当たりの蒸発水分量を下げることができるため、生産効率が上がります。一方、原液濃度は、製品の粒度や密度に影響するため、適切な値を設定する必要があります。添加剤や賦形剤の種類と添加量を調整することにより、フレーバー成分の残留率や、粉末強度、崩壊性、徐放性等を制御します。また、トレハロースや環状オリゴ糖のシクロデキストリンなどを添加し、特定成分のマスキング、安定化、風味改善を行うこともあります。
揮発性の成分は、通常は低沸点であるため、噴霧乾燥時に蒸発してしまいますが、マルトデキストリンやシクロデキストリン、オリゴ糖類等を添加することによって、成分を残存させることが可能です。例えば、シクロデキストリンは、疎水性の空洞内に、揮発性成分の分子を包接することで、噴霧乾燥時における成分の散失を低減することが可能です。そのため、製品の風味成分の徐放化に効果があります。また、粉末酒などのアルコール含有粉末も同様に、被覆性を持つ添加剤を適切な濃度で添加し、低温で噴霧乾燥することによって、高いアルコール残存率を保持した粉体を製造することが可能です。高品質の粉末酒は、再び水に溶解した際に、アルコールだけではなく、液体酒が持つ風味も復元することが可能です。
スプレードライは、一般に乾燥時に溶媒が液滴の表面から蒸発すると同時に、内部の水分が表面に移動することで、液滴全体が収縮します。水分の移動と同時に、液滴内の固形分が外側に移動しながら粒子構造を形成します。そのため、粒子は外殻の密度が高くなり、内部は低密度あるいは中空状になる傾向があります。また、懸濁液において、液体内に含まれる粒子成分が複数あり、それぞれの粒径や密度が異なる場合は、乾燥時の粒子移動によって造粒体の内部で偏析が生じることがあります。原料の物性や乾燥粒子の粒度、密度、内部構造等を把握し、その上で運転条件の適切な制御を行うことが重要です。
粉体製品の品質管理は、粒度分布、かさ密度、含水率が主要なパラメータとなります。これらに加えて、流動性や湿潤性、溶解性、色合い、味覚にかかわる粒子表面特性等を含める場合もあります。粒度については、大きい粒子は流動性が良く、容器に充填されやすいため、かさ密度は高くなります。小さい粒子はその逆となり、かさ密度は低くなります。かさ密度の数値が不安定な場合は、製品充填時の安定性が低下します。含水率は、大きい粒子は比表面積が小さいことから、乾燥時に水分の抜けが悪くなることで、水分値が高くなる傾向にあります。小さい粒子は、比表面積が大きいため水分が抜けやすく、水分値が低くなります。一方、吸湿性の高い粉体は、排気に含まれる水分を再吸湿することによって、小さい粒子が高水分値に、大きい粒子が低水分値になることもあります。
当社のスプレードライヤーは、香料・香辛料の噴霧乾燥工程における多数の実績があります。積み重ねた経験と実績から、要求品質を満たした最適なプロセス設計および運転条件設定を行います。スプレードライヤープロセスの諸条件を最適化し、粉体品質をコントロールする事が可能です。また、当社が開発したフリーズグラニュレーターは、スプレードライ製品およびフリーズドライ品の粉砕製品の弱点を解決することが可能なプロセスです。凍結造粒技術については、フリーズグラニュレーション(凍結造粒)とは、食品・医薬品における凍結造粒技術の優位性、生菌率を高く保持する – 菌体のスプレードライ(噴霧乾燥)とフリーズグラニュレーション(凍結造粒)等で紹介しています。
当社は、スプレードライヤー、スプレークーラー、フリーズグラニュレーターの粉体製造だけではなく、前後工程を含めたテスト・分析・測定サービスを提供しています。国内二拠点のパウダーテクニカルセンターおよびASEANパウダーテクニカルセンターの計三拠点において、顧客の課題を解決するために日々運営しています。2023年に新設した第二パウダーテクニカルセンター(PTC2)では、国内最大規模の分析・測定装置を取り揃えています。粉体加工だけではなく、原料調製から分析・評価までワンストップで対応する事が可能です(粉体テスト・分析・測定サービス詳細/粉体委託加工サービス詳細)。
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