藻類は、酸素発生型の光合成を行う生物のうち、コケ植物、シダ植物、種子植物を除いたものを指します。そのうち、ワカメやコンブ、アオノリ、海ブドウなどの肉眼で見ることができるもの以外に、微細藻類と呼ばれる1μm〜1mmほどの微細な植物プランクトンが存在します。微細藻類は、基本は単細胞生物で、光合成によって地球の大気に含まれる酸素の約半分を生成します。微細藻類は、未発見の種を含めると数百万種ほど存在すると言われています。
微細藻類は、水圏における食物連鎖の基盤と言われ、上位生物に栄養源を供給しています。微細藻類の体内には、脂質、糖質、タンパク質、ビタミン、ミネラル、食物繊維等を豊富に含んでいます。クロレラやスピルリナ、ミドリムシ(ユーグレナ)、ラビリンチュラ、ドナリエラなどは、体内に含まれる有用成分を抽出することで、機能性食品として商業的に利用されています。ヘマトコッカスから体内で合成される赤色のアスタキサンチンは、紫外線予防効果や抗酸化作用があるため、疲労回復やアンチエイジングなどに効果があるとしてとされており、化粧品やサプリメント等で利用されています。微細藻類は、食品やサプリメント以外にも、家畜飼料や肥料、土壌調整剤、着色料等にも活用されています。また、微細藻類は、将来の有望な代替エネルギー候補となるバイオ燃料としても認識されています。藻類バイオマスには、高い脂質含有量を持つものが存在します。また、二酸化炭素固定能も高く、増殖速度にも優れることから、主に航空機や自動車等の輸送用途に適した、持続可能な航空燃料(SAF)や再生可能ディーゼル(RD)といった、環境に優しい次世代燃料の原料として期待されています。
筑波大学の藻類研究リサーチユニットでは、ボトリオコッカス( Botryococcus braunii )やオーランチオキトリウム( Aurantiochytrium )等を原料としたバイオ燃料の研究を行っています。オーランチオキトリウムは、光合成をしない従属栄養生物であるため、藻類の定義からは外れますが、2010年12月に筑波大学で開催された「第一回アジア・オセアニア藻類イノベーションサミット」において、筑波大学の渡邉信教授らの研究グループによって発表されました。オーランチオキトリウムは、オイル生産効率が高く、周囲の有機物を取り込むことによってオイルを生産します。この特徴から、有機排水中において、一次処理水にオーランチオキトリウムを投入してオイルを生産し、オイル抽出後の二次処理水では、ボトリオコッカスを用いた光合成によるオイル生産を行うことで、水の浄化を行いながら、同時にオイルを二段階生産できるプロセスが実現する可能性があります。なお、オイル抽出後の残渣は、メタン発酵や家畜飼料へ活用することも可能です。2023年4月には、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のカーボンリサイクル実現を加速するバイオ由来製品生産技術の開発プロジェクトにおいて、外来遺伝子を導入することなく、燃料物質である油を細胞外に生産する微細藻類の作製に世界で初めて成功しました。シアノバクテリアSynechococcus elongatus PCC 7942株に対して、特定遺伝子の発現強化等を行うことで、燃料物質である遊離脂肪酸を効率的に細胞外に生産させることに成功しました。プロジェクトの一員である大成建設等は、さらなる生産能力向上を図り、藻類バイオ燃料製造システムの構築と実証試験を行うとのことです。
微細藻類によるバイオ燃料は、大きな可能性を秘めていますが、実用化にいたるためには、商業的に実現可能な生産コストにする必要があるため、大量培養生産技術の確立による生産効率の向上と製造原価の低減が求められています。また、バイオ燃料以外においても、食品や医薬品等の分野で、微細藻類が生み出す有用成分を余すことなく活用することで、原料としての付加価値を最大化することが重要です。例えば、当社顧客であるユーグレナ社は、横浜市、千代田化工建設、伊藤忠エネクス、いすゞ自動車、ANAホールディングスの協力のもとで、国産バイオジェット・ディーゼル燃料の実用化に向けた実証プラントを稼働する一方で、食品や化粧品等のヘルスケア分野において様々な商品を展開しています。オーピーバイオファクトリー社は、海洋生物資源の収集から化合物・機能性探索および研究開発を行っており、自社のライブラリーから見出した微細藻類パブロバを用いて、フコキサンチンやEPA、DHA、GABA等を豊富に含む高付加価値商品「パブロバ」を展開しています。オーピーバイオファクトリー社は、本社所在地である沖縄ライフサイエンス研究センターにおいて、分離した微生物の培養工程には当社のバイオシェーカーを、また微細藻類の粉末化プロセスには当社のスプレードライヤーを使用しています。
微細藻類の製造工程は、培養からはじまります。培養工程は屋外における開放系とフォトバイオリアクターによる閉鎖系があります。その後、培養した藻類を収穫し、濃縮、濾過、抽出工程を経て精製します。精製後は、用途に応じて加工を行い、バイオ燃料や食品、化粧品、医薬品、バイオプラスチックなどの最終商品となります。微細藻類の乾燥工程では、スプレードライヤーが使用されています。微細藻類が生み出す有用成分を粉末化することで、食品、医薬品、化粧品、飼料、肥料等の分野において、より一層の利用拡大が期待されています。カロテノイドやレクチンは、創薬の分野においても有望な探索対象とされています。
当社のスプレードライヤーは、先述の筑波大学の渡邉信教授が理事長を務める(一社)藻類産業創成コンソーシアムをはじめとして、微細藻類の乾燥工程において、国内の主要企業へ多数の納入実績があります。積み重ねた経験と実績から、要求品質を満たした最適なプロセス設計および運転条件設定を行います。スプレードライヤープロセスの諸条件を最適化し、粉体品質をコントロールする事が可能です。また、当社が開発したフリーズグラニュレーターは、スプレードライ製品およびフリーズドライ品の粉砕製品の弱点を解決することが可能なプロセスです。凍結造粒技術については、フリーズグラニュレーション(凍結造粒)とは、食品・医薬品における凍結造粒技術の優位性、生菌率を高く保持する – 菌体のスプレードライ(噴霧乾燥)とフリーズグラニュレーション(凍結造粒)等で紹介しています。
当社は、スプレードライヤー、スプレークーラー、フリーズグラニュレーターの粉体製造だけではなく、前後工程を含めたテスト・分析・測定サービスを提供しています。国内二拠点のパウダーテクニカルセンターおよびASEANパウダーテクニカルセンターの計三拠点において、顧客の課題を解決するために日々運営しています。2023年に新設した第二パウダーテクニカルセンター(PTC2)では、国内最大規模の分析・測定装置を取り揃えています。粉体加工だけではなく、原料調製から分析・評価までワンストップで対応する事が可能です(粉体テスト・分析・測定サービス詳細/粉体委託加工サービス詳細)。
当サービスをご紹介する特設サイトプリス粉ラボを新たにリリースしました。サービスや施設の詳細、また技術資料もご案内していますので、ぜひアクセスしてください。
写真提供:オーピーバイオファクトリー株式会社、パブロバ
※掲載している写真は、実際のプロジェクトとは異なり、イメージとして使用している場合があります。