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コラム#25 「火星人と地球人は親類か?(その1)」
2022.01.13更新
小惑星探査機「はやぶさ」が世界で初めて小惑星の表面サンプルを持ち帰ったことは、各種メディアで報じられ、いくつもの映画となりました。
後継機の「はやぶさ2」も小惑星「リュウグウ」から大量のサンプルを持ち帰り、その解析が進行中です。
小惑星の構成成分を分析することで太陽系の成り立ち等の研究が進展することが期待されています。
さらには「生命の起源」についても重要な情報が得られるかも知れません。
生命の起源
「生命は地球上で誕生した。」と多くの方が考えているでしょう。しかし、生命発祥の場についての議論は、未だ結論を得ていないのです。
「生命地球誕生説」は地球に生きるものにとっては自然な発想でしょう。そしてその科学的な根拠の1つは、シカゴ大学のスタンリー・ミラーが1953年に行った実験です。
太古の地球環境を模した大気成分の中で放電と加熱・冷却を繰り返したところ、アミノ酸が合成されたというものです。
ご存じの様にアミノ酸はタンパク質を作る物質です。まだ熱い海と大地、そこに降る豪雨、そして雷。いかにも太古の地球環境のイメージです。
ミラーは恩師であるハロルド・ユーリーの教えに従って、水、メタン、アンモニア、水素を大気の主要成分として実験をしました。
しかし、その後の研究で太古の大気成分は、もっと酸化された二酸化炭素や窒素酸化物が主であったと考えられるようになります。
こうなると太古の地球でアミノ酸が合成されたとする実験的根拠も揺らいでしまいます。地球上でないならば、宇宙からもたらされたとする説も当然あり得るわけです。
今後の研究で、小惑星のサンプルから何らかの有機物が発見されれば、「生命宇宙起源説」は言い過ぎでも、生命の基となった物質のいくらかは宇宙由来である可能性が大きくなります。
そして生命の基が宇宙でできたのであれば、地球以外の場所でも生命が生まれているかも知れません。
「はやぶさ」プロジェクトの結果が待ち遠しいです。
名作「宇宙戦争」
さて、宇宙にも生命が存在すると考える人は昔から多く、古くからSF小説の題材になってきました。
イギリスの作家H・G・ウェルズが1898年に発表した「宇宙戦争」は、その先駆的古典です。(以下、作品のネタバレが含まれます。できるなら本小説をご一読ください。)
火星で進化した生命体「火星人」が地球の環境を妬んで攻め込んできて英国で暴れる話です。
宇宙人と言えば、頭の大きなタコ型というステレオタイプを作った小説でもあります。
火星人は大きな頭に大きな目と小さな口を有し、地球人の血液を吸います。科学技術水準は地球よりはるかに高く、ビーム兵器や3本足の戦闘ロボットで地上を蹂躙します。
宇宙戦争という題名のくせに、戦場は英国のロンドン郊外で、スターウォーズのような宇宙空間でのドンパチは一切ありません。
「地上戦争」ではないか?との声も昔からあるようです。しかも、宇宙船は大きな砲弾かロケットのようなもので、地面に大きなクレーターを作って激突します。
なんとも乱暴な着陸で、搭乗の火星人は無事なのか、心配になってしまいます。そして最後は地球の病原菌に感染して全滅。なんともあっけない幕切れです。
このように、現代の私達にとってはツッコミどころ満載ですが、100年以上前の作品では仕方ないかも知れません。
それでも過去に何度も繰り返し映画化された古典の名作です。機会があれば、是非お読み下さい。
次回は、生物的視点から火星人を考察致します。
技術顧問 博士(農学)
茂野 俊也(Toshiya Shigeno)