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【スプレードライヤーテストレポート】リンゴの形のような中空のような陥没のような・・・粉を作ってみる
2018.09.13更新
弊社でお客様からの質問として「陥没球を無くすにはどうしたらよいか?」と受けることが多々あります。
それはセラミックス・金属等のスプレードライの後工程のプレス工程で、陥没球であると成形体の強度が低下する等の理由から、極力陥没球を避ける傾向がある為です。
そこで今回はタイトルの通り、リンゴの形・中空・陥没などと言われる粉 (今回は陥没球とします)と陥没の無い中実球を作り、比較してみたいと思います。
陥没球が多くなる原因として、分散の良い原液を使用した場合が挙げられます。
図1にスプレードライした際の液滴の乾燥工程のイメージを示します。
図1 液滴の乾燥工程イメージ
図1に示す乾燥工程の通り、分散の良い原液の場合、
一次粒子の凝集する力が弱く乾燥工程で液滴内部の一次粒子が外側に移動し、収縮しながら液滴表面に集まり外殻を作ります。
内側の溶媒が乾燥(蒸発)していくと収縮が発生する為、外殻が内側に凹み陥没球となります。
分散が悪い原液の場合、一次粒子の凝集する力が強い為、乾燥工程で液滴内部で外側に一次粒子が移動することが少なく、収縮していきます。
溶媒が乾燥(蒸発)していく工程でも凹むことが少ない為、中実球となります。
今回のテストでは、”分散剤無(分散の悪い原液)”・”分散剤有(分散の良い原液)”の2つの原液を使用し、他の条件は一定として
粒子がどのように変化するかを検証します。
ここで、2つの原液の様子を図2・図3にそれぞれ示します。(黒い一粒一粒が一次粒子)
図2 原液①(分散剤無)の顕微鏡画像
図3 原液②(分散剤有)の顕微鏡画像
図2・図3から確認できるように、図3の原液のほうが一次粒子が離れ合っていることが確認できます。
それでは、以下に検証した結果を記載します。
今回テストの条件
【スプレードライ条件】
使用装置: | ターニング式スプレードライヤー TR160(乾燥室径φ1600mm) |
---|---|
ディスク回転数: | 8,000rpm |
原液供給速度: | 5kg/h |
温度条件: | 入口温度200℃ / 出口温度100~102℃ |
【原液条件】
原液①(分散剤無) | 原液②(分散剤有) | |
---|---|---|
原料:アルミナ | 50wt% | 50wt% |
溶媒:精製水 | 49.75wt% | 49.60wt% |
バインダー:PVA | 0.25wt% | 0.25wt% |
分散剤: | 0wt | 0.15wt% |
粘度: | 1,400mPa・s | 15mPa・s |
液比重: | 1.59g/ml | 1.57g/ml |
上記条件にてスプレードライヤーテストを実施したところ、以下の結果となりました。
測定結果
表1 粒度分布Dv50(μm)
粒度分布Dv50(μm) | |
---|---|
原液①(分散剤無) | 63.7 |
原液②(分散剤有) | 54.8 |
図4 粒度分布(体積)
赤:原液①(分散剤無)
緑:原液②(分散剤有)
図5 円形度
赤:原液①(分散剤無)
緑:原液②(分散剤有)
図6 アスペクト比
赤:原液①(分散剤無)
緑:原液②(分散剤有)
表1,図4より、分散剤無の粒子径が大きくなることが確認できました。
また図5の円形度より、分散剤無が円に近い形状となっており、図6のアスペクト比も分散剤無が縦横が同等に近い形状となりました。
結果、図4,5より分散剤無が、真円に近い粒子を得られたことになります。
実際の顕微鏡写真が下記となります。
図7 原液①(分散剤無)の回収粉_顕微鏡画像
図8 原液②(分散剤有)の回収粉_顕微鏡画像
図9 原液①(分散剤無)の回収粉_浸液透光法での顕微鏡画像
図10 原液②(分散剤有)の回収粉_浸液透光法での顕微鏡画像
上記顕微鏡画像からも、実際に分散剤有のほうが陥没球が多いことが確認でき、今回の目的である陥没球と中実球を作ることができました。
固形分濃度を上げる等で分散剤を使用することもあるかとは思いますが、
今回のテストのように、分散の良い原液を使用することで陥没球ができることもありますので、分散剤の種類や特に添加量にご注意を。
【参考文献】
1)名古屋大学大学院 椿 純一郎・廣瀬 達也・塩田 耕一郎・内海 良治・森 英利 (1998):
“噴霧乾燥顆粒の構造形成過程に及ぼすスラリー特性の影響”,日本セラミックス協会学術論文誌,1210-1214
2)名古屋大学大学院 森 隆昌、椿 純一郎(2011):
“噴霧造粒から乾式プレスまで「最適な顆粒」とは何か?”,粉体技術第3巻 特集:セラミックスと粉体技術,30-34
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