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コラム#2 見えなくとも、すぐそこにいる微生物
2017.09.04更新
前回、最後に「実は私達は微生物にまみれて生きています。
いやむしろ、微生物にまみれないと健康な生活はできないのです。」と紹介しました。
お約束通り、今回は極めて身近な微生物の話です。
手のひらをよく観察しても微生物を発見することはできません(見つかるようなら、大変です。すぐ、病院へ!)。
“目に見えない”のが微生物の特徴ですから。
皮膚にはたくさんの微生物??
でも皮膚には1平方cm当たり1万~10万匹の様々な微生物がいます。
皺や毛穴などの凹部分は、物理的に微生物が留まりやすい場所です。
加えて皮膚から分泌される皮脂や死んだ皮膚細胞などが混じった“垢”も溜まりやすく、これは微生物の良いエサ(専門的は基質と言います。)となります。
体臭の多くは垢成分を微生物が食べる(正確には部分分解する)ことで生じる物質の匂いです。
でも、体臭を気にして洗浄や除菌をやりすぎるのは、健康に良くありません。
健康な状態なら、皮膚表面の微生物コミュニティはバランスが保たれています。
基質や住処(凸凹部分)の取り合い、増殖条件の違いなどによって無数の微生物が競争し、多様性があるからこそ微生物コミュニティは安定するのです。
ですから極端に微生物が少ない状態を作ってしまうと、特定の微生物種のみが増えてしまい、ひどい場合には病気の原因となります。
また皮膚表面の微生物が免疫系を刺激して、皮膚細胞の抗菌物質分泌を促すことも知られています。
気の遠くなるような長い時間をかけて、人は皮膚表面の微生物との関係を作ってきたのです。
皮膚表面に微生物がいることは汚いのでなく、理由のある“必然”なのです。
体内の微生物は??
さて、人の体において外界と接する表面は2つあると考えられます。
1つは先に紹介した皮膚表面ですが、もう1つは消化器系の内部表面。
口内から始まり、食道、胃、腸と繋がる一連の管は体の内部と思い込んでいますが、その表面は体の内側にある外界との接触面です。
外界である消化器系の内部にも、皮膚表面と同じように多くの微生物が住んでいます。
ただし同じ外界でも皮膚表面とは環境条件が随分異なります。
特に違うのは、基質の濃さと温度条件でしょう。
人の食べ物は微生物にとってもご馳走です。
消化器系は食べ物を処理する臓器ですから、皮膚表面とは比べようもなく基質の濃度が高い場所です。
さらに消化器系の中は体温で一定温度に保たれ、ぬくぬくのご馳走攻め状態。
これでは微生物に増えるなと言っても無理な話です。
人の体は優れた培養器??
唾液中の微生物数は1mL当たり1000万~10億匹もいます(虫歯にもなろうってもんです。)が、胃では胃酸にさらされ胃液1mL当たり100~1000匹と激減します。
しかし胃酸攻めに耐えた微生物は、腸内の「ぬくぬく&ご馳走攻め」で増えに増えて大腸では排泄物1g当たり1000億匹以上(排泄物の3分の1程度が微生物)になり、トイレでご対面となるのです。
「1g当たり1000億匹」というのは実に驚異的な微生物密度です。
当社は微生物の培養機を作るメーカーですが、残念ながらこれほどの高密度培養はできません。
世界的に見てもこの数字の10分の1以下の実績しかないでしょう(反対の知見をお持ちの方は、是非ご一報を)。
しかも人が食べたものは約24時間で排泄されます。
「24時間」で「1g当たり1000億匹」。人の体はなんと優れた培養機なのでしょう。
皮膚表面とは桁違いの微生物濃度がある消化器系ですから、微生物と人との相互関係もかなり密です。
「腸内環境」とか「プロバイオティクス」という言葉がもてはやされるのも当然です。
腸内微生物が人の免疫系の発達を促していること、腸内微生物が腸内に留まるために腸の細胞に働きかけていること、腸内微生物のバランスが崩れるとアレルギー症状を引き起こす原因となることなど、多くのことが解ってきました。
しかし、科学的には未だにブラックボックスの巣窟。
健康な腸内微生物環境とは何か?の答えを求めて、世界中で先端的な研究が行われていますが、全容解明はまだまだ先のこととなりそうです。
次回は口内や腸内の微生物と人の生態の関係を紹介しましょう。
微生物を知れば、その人の私生活も明らかに!?